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ドラゴンは巨大な島の先端を目指してゆっくりと下降を始めた。
地上に着く瞬間、ドスンと島中に届かんばかりの地鳴りが響く。
漆黒のドラゴンは首をブルブル震わせ、人間でいうため息の様にスケールのどでかい鼻息をフシューっと鳴らす。
役目を終えた翼を運動後のストレッチの様に上下に動かし、その度繰り出される風圧で辺りの草木は吹き飛ばされまいと必死で堪えようとしている。
そんな様子を見てから、改めて自分の頬をつねってみたが、痛いだけで目は覚めなかった。
「ゆ、夢じゃねぇの……か?……ここは一体どこだよ?」
「その問いに答えるのは我ではない、我はうぬをここまで連れて来るのが役目。
案ずるがよい。この先はそこにおる妖精が案内する。」
漆黒のドラゴンはそう言い終え、長い首を地面に伏せる。
どうやら降りろということだろう。
俺は慎重にドラゴンの頭を伝い空に浮かぶ島へと足を踏み入れた。
ふと飛んで来た方向に目をやる。
強い風が遠くで吹いている。巨大な雲が物凄いスピードで流れ、やがて一つの島を追い越していく。
雲海に浮かぶ見渡す限りの島々はまさに壮観だ。
まるで自分を中心に世界が回っているように思える。
ふと、近くの島の上方を見下ろす事が出来た。
そこには石製の建造物の残骸があった。
かつて屋根を支えていたであろう柱が何本か横わたっていて、その一部は地面に深く埋もれていた。
経年劣化か争いによるモノか、所々に酷い損傷と葵苔が纏わりいている。
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