現れし者

2/3
前へ
/30ページ
次へ
苦しい息の中、僕は笑って見せる。 遊間の目が、僅かにつり上がった。 「陽日、俺はキミのことも気に入っているんだ。できれば傷付けたくない」 「こんなことをしといてっ、何を今更…」 「うん、そうだね。だから早く彼を出してよ」 急に恐ろしい顔付きになった遊間は、僕の上に乗りかかり、首を締め上げてきた。 「がはっ!」 「彼に会いたいんだ。会いたくて会いたくて、仕方ないんだ」 遊間の目は、苦しげに歪んでいる。 まるで恋焦がれているように…。 「彼が俺のことを知らないのが、苦痛でたまらない。会わせてくれるだけでいいんだ。キミに迷惑はかけないと誓えるよ」 「イヤっ、だ!」 それでも僕は頷かない。 「―そう。なら、仕方無いな」 遊間は片手を外した。 すると『人形』の1人が、遊間の手に、ナイフを持たせた。 「キミを傷付ければ、さすがに彼も出てこないワケにもいかないだろう? キミは彼に、大事にされてたんだし」 「やめっ…! ゆうっ、まっ!」 そんなことしたら、本当にボクが現れてしまう! それだけは! 「最後のお願い、だよ? 彼に会わせて」 僕は唇を噛んだ。 それでも…それでも僕は! 「ダメだ」 ハッキリと拒絶した。     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加