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その名は闇のモノ
―しかし、ナイフが陽日を傷付けることはなかった。
「なっ!?」
遊間の腕を、陽日の手がしっかりと掴んで止めたから。
「はぁ…。ヤレヤレ。ようやく出られたな」
陽日の声なのに、陽日ではない。
顔を上げた顔も、陽日のそれではない。
「ったく。ギリッギリで出しやがって…。後で説教もんだぞ? 陽日」
「…陽日?」
陽日の変貌ぶりに、遊間は動揺する。
「あっ? ちげーよ。俺の名前は…」
恐るべき力で、自分を押さえ込む連中を引き剥がしながら、彼は笑った。
「月夜だ」
自分の腹の上に乗る遊間を蹴り飛ばし、月夜は身のホコリを叩き落としながら立ち上がった。
「随分出来の悪い『人形』を作りやがって…。お前、よっぽどオレに殺されたいらしいな?」
そう言いつつ、月夜は戦闘態勢に入った。
男女混ざっている『人形』達を、一瞬の躊躇いも無く暴力で地面に叩き伏せる。
そこに、迷いや罪悪感なんてまるでない。
陽日に傷付けた連中に、月夜は容赦しない。
陽日を守る―それが月夜の存在意義だから。
「はっははっ…! まさか陽日が、ツキヤだったなんて…!」
『人形』達が次々にやられていく中、遊間は狂喜の笑みを浮かべた。
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