【30】月影のスカーヴィズ

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「全く、疑い深いお嬢さんだこと」 「今まで疑い無しについていったせいで、とんでもない目に遭ってきましたから」  帽子の女性は困ったように俯き腰に手を当てた。  形の良い唇がゆっくりと動き言葉を吐き出す。 「……アドビス・グラヴェールにあなた達の事を頼まれたの」 「えっ?」  リュイーシャは目を瞬かせた。 「あなたは、アドビス様をご存知なのですか?」  帽子の女性は小さくうなずいた。 「少なくとも、あなたよりずっと彼の事は知っているわ。そしてそのアドビスが、あなた達の代わりにロードの船に連れていかれたことも」 「なんですって?」  リュイーシャは心臓を氷の手で握りつぶされるような恐怖感に襲われた。  アドビスがロードの船に連れていかれるなど、思ってもみなかったからだ。
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