【15】嵐の夜

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「なんて酷い嵐だ。くそったれ!」  貴族であるシュバルツらしからぬ悪態が、海水を吐いて濡れた唇から飛び出した。  アドビスは黙ったままシュバルツの腕を掴んで立たせた。  貴族の息子にしてはまあ使える部類のシュバルツだが、彼は時として状況を把握することが鈍くいらいらさせられる。  アドビスはまるで自分の声をかき消さんと叫ぶ風に負けじと声を張り上げた。 「掌帆長に荒天時の体制を水兵にとらせるよう伝えろ。メインの一番と三番の帆をさっさと畳むよう、応援にユーギルの班を回せ。開口部は閉鎖し、ハーヴェイに荒天用の海錨を船尾に持ってくるように言ってくれ。わかったな、シュバルツ!」
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