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アドビスはシュバルツの胸倉を掴んだまま、水色の瞳を細める副長の顔をにらみつけた。
「海賊のたわ言など私は信じない」
「は、はは! じゃあその目でみてみるがいい! もっとも、エルシーアの金鷹は海賊船しか目に入らないでしょうがね」
シュバルツの目が勝ち誇ったように輝いていた。
彼は血の気の失せた青白い顔に怯えを見せたまま、かちかちと歯を鳴らしながら、それでも唇を引きつらせて笑っている。そしてゆっくりと何かを指すように金の指輪をはめた右手をあげた。
「……何?」
副長の行為が理解できない。ぎりとアドビスが奥歯を噛みしめた時だった。
「おい、あそこを見ろよ!」
アドビスの背後――メインマストがある船の中ほどの甲板から声がした。
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