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「どうした。クーリ?」
海草が絡み付きそれがはたはたと揺れるメインマストの下で、水兵の点呼をとっていた士官ハーヴェイが、右舷の船縁にいる叫び声を上げた水兵――クーリに近付く。
水兵は船が沈んだ時の衝撃で脱げてしまったのか、上半身裸で、肩まで伸びた茶色の髪も濡れて黒々としていた。
「ハーヴェイさん、あそこ、見て下さい。ほら!」
ハーヴェイはクーリの言うまま、彼の隣に並んで立つとその指し示す方向を見た。
「……え?」
「どうしたどうした?」
一緒に点呼をとっていた掌帆長オルソーも、ハ-ヴェイと一緒に右舷の船縁に駆け寄り、水兵が指差す方向を見る。
「まさか……」
オルソーの太い喉がごくりと鳴った。
「まさかじゃねえ! みんな、あれがみえるだろう?」
クーリの声で甲板にいた水兵達約七十名がどっと右舷舷側に駆け寄った。
「人だ! 海に誰か立ってるぞ!」
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