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「さあできたよ。お飲み。これで少しは体も暖まるだろう。ひっ」
「ありがとうございます」
リュイーシャはマヌエルから温かい液体が入ったカップを受け取った。
普段は薄暗い医務室だが、リュイーシャが身を起こしている吊り寝台の前にある卓上には、いつもの倍の数の蝋燭を灯した燭台が置いてある。
橙色に輝く蝋燭の光は暗すぎず、また明るすぎず、リュイーシャの心から覆い被さるような不安を追い払い、徐々に安らぎをもたらしてくれた。
カップを両手で包み込むようにして持つと、マヌエルがくれた温かい飲み物からは果実のような甘酸っぱい香りが立ち上ってきた。
島の岬で風に吹かれ海を眺めていた光景がふと脳裏をよぎる。
なんだか、懐かしい香り。
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