【3】予感

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  絶海の孤島であるクレスタに他所者が来るのは年に数回。   島の人間なら未だしも、まったく面識のない人間に、まるで人形でも値踏みするような視線で見られるのは不快感を覚えるし、何よりも気持ちが悪い。   カイゼルもそれに気付いたのか、後方を振り返ると、そっとリュイーシャに向かって手招きした。 「紹介が遅れました。我が娘のリュイーシャです。巫女として、亡妻の後を継ぎ島を守っております」   カイゼルの隣に並んだリュイーシャは、父の兄に向かって頭を垂れた。   先程リオーネが作ってくれた島ユリの花を金色の髪に挿し、白い布を体に巻き付け、余ったそれを左肩からゆるやかなひだを幾重にも作って、深海の色をした石のついた留め具で止めている。   「ほう。まるで海の泡から出てきたように美しい娘御だ。しかし……」  カイゼルと同じ目の色をしたロードのそれが、一瞬戸惑うように光るのをリュイーシャは見た。 「よく、似てるな。父上を魅了させた月影色の髪。お前の母上を思い出す」 「兄上」
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