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「アノリアが近いから、そこから飛んできたのだろう」
アドビスが手びさしして天を仰いだ。
白い鳥はフォルセティ号の左舷側に沿って甲板へ降りる様子をみせた。
リュイーシャとリオーネが立っているまさにその場所へと。
黄色い水掻きがついた両足を広げ、どすんと、尻餅をつくように降りてくる。
「姉様、あの鳥さん、何かくわえてる」
飛ぶ時の優雅さとは正反対に、不様な着陸をした鳥は、リオーネの言う通り何か黒いものをくわえていた。
「あれは」
リュイーシャとアドビスは、見覚えあるその物体を凝視した。
甲板に降りた白い水鳥は、額から後頭部にかけてくるんとカールした飾り羽を風にゆらゆらとゆらしながら一声鳴いた。
その拍子にくわえていた黒い物体が甲板に落ちた。
それは、黒い布切れのようにみえたが、ぐるりと輪になった紐がついている。
リオーネがおずおずと水鳥の方へ近付き、その布切れに手を伸ばした時だった。
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