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「れなんでぃ、沈んだ。しぐるす、どこ?」
水鳥が黒い瞳を潤ませてリオーネをじっと見つめている。
首をかしげるように傾かせ、黄色いくちばしが再び開いた。
「れなんでぃ、もえた。沈んだ。しぐるす、どこ?」
――レナンディ、燃えた。沈んだ。シグルス、どこ?
「まさか!」
リュイーシャの隣にいたアドビスが小さく驚きの声を発した。
そして大柄な体躯を素早く回転させて、前方でまさに海に沈もうとしている件の船を凝視した。
「レナンディ号が、襲われたというのか……!?」
「これ。あの海賊のおじちゃんがしていた眼帯だよね」
リオーネが拾い上げた黒い物体――恐らく、海賊シグルスが身に付けていた眼帯であろう。
リュイーシャもまたそれを複雑な思いで見つめていた。
胸の奥でちくりと痛みが走った。
何かがまた起ころうとしている。
昔から悪い事の勘の方が、良い事のそれより勝った。
「しぐるす、どこ?」
羽音と共に水鳥は甲板から飛び立った。主の名を呼びながら。
澄みきった青い空には、炎上するレナンディ号の黒い煙が、どこまでもどこまでも高く昇っていた。
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