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アノリアはリュニスに近い。
それがアノリアで船を下りようと思った一番の理由だ。
見知らぬ土地や人々。通じぬ言葉。
アノリアでの生活になじめなかったら、リュニス本島へ行っても良い。
そこなら、クレスタへ連れていってくれる船も出ているだろうから。
島にはもう誰もいないけれど、故郷との繋がりをここで断ち切る勇気が、今のリュイーシャにはなかった。誰にも頼れない自分達の、最後の拠り所へ戻れる手段を――失いたくなかった。
「リュイーシャ」
何時の間にかリュイーシャは俯いていた。
不安げに自分を見上げるリオーネの顔と、アドビスの呼びかけでリュイーシャは我に返った。
「私は……貴女の気持ちを尊重する。貴女がアノリアで船を下りると決めたのならば、もう反対はしない」
「アドビス様」
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