【25】アノリア

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 リュイーシャの声は掠れた。  アドビスはきっとリュイーシャの決意をわかっていたのだろう。  二日前にふたりきりで話したあの時に。 「だが貴女に頼みがある」  アドビスの長い手がリュイーシャの肩を覆うように掴んだ。  アドビスは長身を折り曲げて、リュイーシャとリオーネを抱きしめる。  高ぶった感情を辛うじて抑えているのか、背中から聞こえるアドビスの声も掠れていた。 「僅かばかりだが、当座の生活に必要なものをコーラル夫人が用意してくれている。それを必ず持っていって欲しい。だが、リュイーシャ、リオーネ。気が変わったらいつでも船に戻ってくれ。フォルセティ号は明日の15時にアノリアを出港する」  アドビスが名残惜しそうに腕を解いた。 「アドビスさま。私、本当はお別れしたくない。でも……姉様の気持ちもわかるの。リュニスから遠く離れた土地にいくのはこわい」  リオーネの瞳は涙でうるんでいた。  リュイーシャもまた、思いがけないアドビスの言葉に、胸がしめつけられるような苦しさを感じていた。  私だってお別れしたくない。  唇まで出かかったその言葉を、リュイーシャは未練がましい己の心と共に飲み込んだ。
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