【25】アノリア

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 ◇◇◇  それから二時間後。  リュイーシャとリオーネは、食料を調達するため上陸するハーヴェイたちの班と一緒に、雑用艇でアノリア港の桟橋へと向かっていった。 「見送りはされないのですか?」  外は黄昏れており、窓のない海図室は薄暗くなっている。明かりもつけず、ひとり航海日誌のページを繰るアドビスへ、シュバルツが静かに声をかけた。 「もう済ませた。二時間前に」 「そうですか」  乾いた声でシュバルツが答える。 「当直に見張りを怠らないように言ってくれ」  日誌を静かに閉じて、アドビスが顔を上げた。 「それは海上ですか? それとも、港の方ですか?」 「どっちもだ」  アドビスはぶっきらぼうに返事をして席を立つと、疾風のように海図室から甲板へと出ていった。後に残されたシュバルツは、やれやれと肩をすくめ冷笑を浮かべた。 「風は金鷹の翼を擦り抜けてしまったか……残念だったな」
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