【26】逃避行

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 心の奥底で、本当は期待していたのかもしれない。 『行くな。リュイーシャ』  そう――アドビスが自分を引き止めてくれることを。  リュイーシャは、すっぽりと体を覆う灰色のマントに付いたフードを目元まで引き下げ、思わず涙ぐんだ自分にリオーネが気付かないことを祈った。  アノリア港へ向かう雑用艇には、食料を補給すべく選ばれた水兵達14名と、彼等を指揮する士官のハーヴェイ、そしてリュイーシャとリオーネが乗り込んでいた。  雑用艇の船尾では、濃紺の軍服を着たハーヴェイが舵柄を握って操船を担当し、その前の座板にリュイーシャとリオーネが並んで腰掛けている。
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