54人が本棚に入れています
本棚に追加
/452ページ
心の奥底で、本当は期待していたのかもしれない。
『行くな。リュイーシャ』
そう――アドビスが自分を引き止めてくれることを。
リュイーシャは、すっぽりと体を覆う灰色のマントに付いたフードを目元まで引き下げ、思わず涙ぐんだ自分にリオーネが気付かないことを祈った。
アノリア港へ向かう雑用艇には、食料を補給すべく選ばれた水兵達14名と、彼等を指揮する士官のハーヴェイ、そしてリュイーシャとリオーネが乗り込んでいた。
雑用艇の船尾では、濃紺の軍服を着たハーヴェイが舵柄を握って操船を担当し、その前の座板にリュイーシャとリオーネが並んで腰掛けている。
最初のコメントを投稿しよう!