【3】予感

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「あら……?」  何気なく西の方角を見ていたリュイーシャは異変に気付いた。  確か商人達は三隻の船でやってきた。そして、島から少し離れた海で錨泊していたのだが、見た所二隻しかいない。ロードの乗ってきた黒塗りの皇族専用艦と商船の一隻が、月の光に照らされてその輪郭がぼんやりと黒く浮かび上がっている。 「後の一隻はどこへいったのかしら……」  リュイーシャは青き闇に包まれた水平線に目をこらしたが、それらしい姿は見当たらない。 「……いつもとやはり違う」  商人の一行を出迎えてから、リュイーシャはどこか心がざわつくのを感じていた。  例えるなら目の前を薄紙で覆われているような不安。  それを破り何が行われているのか、見るのは易いけれど、見ればかろうじて保たれている均衡が崩れてしまうようで、それが、怖い――。  他所者が島に大勢いるから、それで神経が昂っているだけですよと、女中頭のメルジュはそう言ってくれたのだが。  けれど。  昔から良い事より悪い事の方の勘が圧倒的に勝った。
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