【29】月下の邂逅

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「まあ、泣き叫ばれるよりずっといいけど。……ふうん。リュニスの皇子様が血眼になって探すのもわかる気がする。あなた、まるで海の精みたい。海の男が憑かれてやまない海の色。青緑の瞳――」  リュイーシャが帽子の女性の顔を見ていたように、先方もリュイーシャの顔を覗き込んでいた。 「私は……クレスタのリュイーシャです。そしてこっちは妹のリオーネ」  帽子の女性は夕暮れ色の切れ長の瞳を細めてうなずいた。 「自己紹介は私の船に着いてからさせてもらうわ。さ、ついてきて」  リュイーシャは黙って女性の指示に従った。  が、胸の内では疑問が雲のように沸き上がっていた。  彼女はどうして自分達がリュニス兵に追われているのを知ったのだろう。  そして何故、助けてくれるのだろう。  あるいは、助けると思わせて、彼女がロードの所まで自分達を連れていこうとしているのではないだろうか?  自分達に懸賞金がかけられていたら、その賞金目当てということも考えられる。リュニス兵を足技で簡単に倒してしまう技量からみて、ただ者ではないのだから。
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