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「あの」
リュイーシャは帽子の女性に声をかけた。
女性はリュイーシャ達の足に合わせて歩いてくれている。
「この港、ひょっとした奴隷船専用の港じゃ……」
女性は振り返らずに答えた。
「そうよ」
「ちょっと待って下さい。あなたはひょっとして私達を……」
草原を抜け、港に下る山道でリュイーシャは足を止めた。
そこからはハーヴェイに決して近付いてはいけないと言われた、西の奴隷船専用の港が月明かりに照らされていた。
アノリア港のように海に向かって多くの桟橋が突き出ていない代わりに、港内には四、五隻の小型船が錨を下ろして停泊している。
リュイーシャのいわんとすることを察したのか、女性は静かに首を振って肩をすくめた。
「安心して。私は奴隷商人じゃない」
「じゃ、何者なの? それを教えて下さるまで、私はここから動きません」
リュイーシャは女性を真っ向から睨み付けた。
帽子の女性は細い銀の眉をしかめたが、目はあきれたように笑っていた。
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