【6】葛藤

3/21
54人が本棚に入れています
本棚に追加
/452ページ
 私だってそう問いたい。  何故?   なぜ……!  「男は一番艦へ。女と子供は二番艦だ!」  抜きはなった軍刀を手に、黒髪の将校らしき男が、無理矢理連れてこられた島民たちを選別している。男は向かって左側の小船へ。女と子供は右側のそれへ。三十人ほど乗せた時点で、船は沖合いに錨泊している軍艦と商船に向けて続々と海へ漕ぎ出していく。 「おとうさん! おとうさん!」  商船へ向かうその船から五才ぐらいの小さな男の子が、母親の腕の中で叫んでいた。この子供だけではない。家族と引き離された誰もが互いの名を呼び合っていた。
/452ページ

最初のコメントを投稿しよう!