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『銀の海獅子』号のフォアマストの檣楼に、右目を黒眼帯で覆った男――シグルスは立っていた。
膝丈まである黒衣の裾を後方から吹く海風になびかせ、銀細工の凝った意匠が施されたベルトには、それに合わせて作られた揃いの短剣が吊されている。
一見傭兵を思わせる格好だが、その殺伐とした雰囲気を和やかにする生き物が右肩に止まっていた。
つぶらで黒い瞳をぱちぱちと瞬かせながら、黄色い小さなくちばしで、シグルスの襟足にかかる黒髪を梳くようについばむ。
「……痛っ!」
シグルスは舌打ちすると、肩に止まらせていた白い鳥に向かって右手を伸ばした。
「こっちへ来い! まったく、お前は……いつもいつもつっ突きやがって。俺の耳をなんだと思ってるんだ」
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