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「お待たせ」
私はお風呂でナカや脇や首筋などを念入りに洗った。そしてボクサーパンツを普通に履き、上半身を隠すようバスタオルを羽織る。
いつもこのスタイルだ。やると分かっていても始めから何も着ていないのは恥ずかしいのだ。
「あぁ」
浩司はソファで携帯を構っていた。何か文章を打っているようで直ぐに立とうとしない。私はぼやっと見つめる。
「どうしたの?なにかあった?」
「いや尚が週末にどこかに行かない?だと」
尚と週末という単語に一瞬で頭の真ん中から冷たくなっていく。もしかしたらそっちを優先してこれで帰るのではないか。どうしよう。どうしよう。
心臓がバクバクしてきて焦ってくる。
「バイト中じゃないの」
「あいつはこういうやつなんだよ。絶対今思いついて上司の目を盗んで打ってるんじゃないか」
まるで昔から親しいような口をきく。優しい顔をして。
せっかくこの時間だけは浩司と2人きりだと思ったのに浩司の頭の中は尚だけなんだ。
「それで、行くの、」
悲しみも怒りも何もないような目をして尋ねた。浩司はこちらを見ようとしない。
「うん、行こうかな。」
即答だった。悠人も行く?とは聞いてくれない。
それもそうだ。浩司は尚が好きなのだ。2人で行けるときは2人だけで行きたいはずだ。
前、その立場は私だったのに。
そう。
浩司に聞こえない声で返事をした。
そういうことならしょうがない。今の目的を思い出せば良い。
もし浩司が尚と付き合ったときに失敗しないために今からすることをするんだ。
別に私が満たされるためにあるんじゃない。
「浩司、ベット行こう」
平坦な言葉がでる。
この男の中から彼を追い出したい。私でいっぱいにしたい。
でも叶わない。この人は彼を思ってするのだから。
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