7・勝敗のゆくえ

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7・勝敗のゆくえ

 迫ってくるオベリスクを避けて、馬たちが必死に四方八方に逃げてゆく。動力を失った戦車が、コントロール不能のまま正面からオベリスクにぶちあたった。盛大な音が、広場に響いた。  戦車の前半部分が破壊され、残りも勢いよく横倒しになる。  空中に投げ出されたマクシムスが、石畳の上に倒れた。頭を打ったのか、額から血を流している。 「マクシムス! 大丈夫か!」  ヴェヌスを安全なところに置いて、決着がついたと判断したパンテオンが、急いでマクシムスのところに駆けつけた。  市場の屋台の屋根から下りたコロッセウムは、剣を持ったまま、ゆうゆうと近づいてきた。  彼もまた、小さな怪我をあちこちに作り、血を流し怪我をしている。そう大きな怪我でないので、気にしないようだった。 「馬たちを先に逃がしたか……。お前も飛び降りれば無事だったのに」  コロッセウムは、周囲でおろおろしている馬たちを見た。馬も戦車の衝突に巻き込まれていたら、骨折などの大怪我はまぬがれなかっただろう。 「馬と……主人の協力が……戦車競争の美学だと言っただろう……。俺一人で……馬を見捨てて逃げることなど……出来ない……」  うめくように言いながら、マクシムスは石畳に倒れたまま、勝者であるコロッセウムを見上げた。 「はぁ、はぁ……。俺はもう動けない……。まさか手綱が切られるとは思わなかった……。俺の負けだ。コロッセウム……」
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