埃男

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 見上げる空は青空だった。いつの間にか日が昇っていたらしい。相変わらず路地裏は薄暗くて陰気だった。俺はどうしたことだろう。心が空っぽなのは感じていたけれど、今やその空っぽが体中に広がってしまったようだった。  あんまりにも空っぽで、どうにも体が軽すぎる。おかしいな、と起き上がろうとして気付く。起き上がり方がわからない。力の入れ方を忘れてしまったようだった。きょろきょろとあたりを見回す。目の合った野良猫が驚き逃げていった。  やっぱり変だ。首を振っている気もしない。ただ目玉ばかりの存在になって、くるくるあたりを見回しているような。いや、やっぱりこれはおかしい。恐る恐る、ぐるりと右に、右に見まわしてみた。  ぐるり、ぐるうり。俺の視界は一周してしまった。その間に、俺は俺の身体を見つけることができなかった。えっ、と声を出したかったのに、口がないから声が出ない。今や俺は、自分がどうなっているかもわからないで地べたに転がっている。俺は一体どうしてしまったんだろう。何回も何回もそれを考える。考えても空っぽだ。いや、空っぽの奥底に答えがあるのを知っている。けれど俺はそれを認めたくないのだ。
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