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どうやらほかに仲間はいそうになかった。
俺は裏通りを抜けビルに挟まれた小さな公園を目指していた。
カーラはゆっくりと歩いてくる・・・手提げ袋を持ちながら。
どこかで武器を調達したのか?いずれにせよ、もうすぐわかることだ。
公園につくと俺はベンチに腰掛けた。
正面には道路が見える。
カーラは・・・来た。
真っすぐ俺のほうへ来て、隣に腰掛けた。
手提げ袋を地面に置いて。
俺は彼女と手提げ袋を交互に見た。
もの悲しげな彼女・・・手提げ袋のなかは手のひら大の赤い色の四角い紙包みの箱・・・
俺たちはしばらく見つめあった。無言で。
カーラは声帯を損傷したため喋れないが、その目がすべてを
語っていた。
しばらくすると彼女は手提げ袋から例の四角い紙包みの箱を出し
俺に渡そうと目の前に差し出した。
彼女は声を出さず唇を動かし確かにこう言った。
「ハッピー・・・バレンタイン」
俺は箱を受け取った。
中身はもう分かっていた。
彼女と今日会ってから、予感はしていた。
俺とカーラ・・・もう疲れきっていた。
人生にテロに、殺しに・・・足を洗うなど所詮、夢物語に過ぎない。
公園には俺たち二人しかいない。
俺とカーラは立ち上がり、紙包を持ったまま敷地内の中心まで歩いた。
も うどうすべきかわっていた。彼女の意向は手に取るようにわかる・・・
何も言わなくても。
俺もその意向に賛成だった。
これでいいのだ。
中心で俺たちは箱を挟むかたちで抱き合った。
俺の心臓と彼女の心臓のあたりに食い込む箱。
両者の心臓の鼓動とは別に明らかに違う鼓動が聞こえる・・・箱から。
道路を楽しそうに通り過ぎる若者たち・・・子供たち・・・
俺たちは抱き合ったままその箱から聞こえる鼓動を聞いていた。
無人の公園・・・道路には誰もいなくなった。
彼女お手製の特別なチョコレート・・・
鼓動と思えるタイマーを刻む音を聞いていた俺たちは
その音が止まるのを確認できた。
次の瞬間、俺たちは閃光と炎に包まれた。
(おわり)
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