遺書

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 「あれ、バッテリー弱ったかな?昨日、兄貴が取り替えたハズなのに。車の時計がおかしい。」  千代子が何かに気づいたようだ。    「何も変じゃないわよ。」  私が見る限り、千代子の指さした車のCDプレイヤーに付いているデジタル時計は普通の表示だ。  「いや、あなたがこう竜頭を押した時に。」  車を止めた千代子が私の手を取って時計の竜頭を数回押す。  「なにこれ、面白い!」  千代子が竜頭を押す度に、腕の時計と車のデジタル時計の分の表示が早回りした。  「2回タタッと連続で押すと時間が戻るわ。」  千代子は面白がって竜頭を押し始めた。私は少し怖い気がしてきた。そして……。  「千代子、雪!雪の動きがおかしい。雪が、雪が降ったり止まったりしている。」  もう千代子が竜頭から手を放しても、時計の動きと雪の動きが変になったのは変わらない。数分間の行ったり来たりを繰り返す。
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