カルテNo.1 約四百歳、女性、エルフ。全身擦過傷、栄養失調。

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カルテNo.1 約四百歳、女性、エルフ。全身擦過傷、栄養失調。

 ベッドが軋む。  部屋には無機質な音と共に、男の荒い息づかいが響いていた。  ベッドに寝ている女の上に覆いかぶさる男。その男は、女の胸元に両手を当てていた。全体重をかけながら、何度も女の胸を押す。  一分間に百回。  それが、女の命を繋ぐための最善の手段だった。 「くそっ! 戻ってこいよ! せっかく手術が無事終わったんだ! このまま逝くだなんて許してたまるか!」  噴き出る汗は、先ほどまで切り開いていた傷口へと落ちていく。全身、汗だくになりながら心臓マッサージを続ける男は、ただただ叫んだ。  部屋の中は滅菌された状態を保つために締め切られている。湿気のせいか、空気はひどく重苦しい。 「おい! わかってんのか!? こっちでやり直すんじゃなかったのかよ! なぁ、おい! 起きろって!」   男の叫びに女は決して応えない。  胸郭が押されるたびに跳ねる腕は、力なくだらりと垂れさがっていた。
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