カルテNo.1 約四百歳、女性、エルフ。全身擦過傷、栄養失調。

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 頭の中は、次の行動で一杯だ。AEDで心臓の動きが戻らなかったらもうここでは成す術がない。今はまだいいが、長時間続けられる行為ではないし、一度動きが戻っても再び止まる可能性もあるのだ。原因が判明しないことには何も解決しない。  理由のまったく見当がつかなかった悠馬だったが、先ほどのリファエルの言葉。それは悠馬の思考にひとつの楔を打ち込んだ。常識的な医療では起こりえないことが目の前で起きているのだ。だったら、その原因も医学的なことではないかもしれない。魔力が、心タンポナーデを引き起こしていたなんて、そんなこと、この世界では決してありえないのだから。  悠馬は先ほどのリファエルの話を思い起こす。  本来であれば身体の外に漏れ出るはずの魔力が身体の中にたまってしまっていたミロル。その原因となった魔力核は魔力をため込む性質があるという。それが切り離された今、ミロルの体には魔力の貯蔵庫がなくなった状態だ。であるならば、エルフのもつ魔力との親和性の高さが、魔力核から少しでも魔力を取り込もうとしているということがあり得るのかもしれない。  つまり、今、ミロルの体は異常に欲しているのだ。  いま一番必要なのは――。 「そうか……」  小さくつぶやいた悠馬の声に、リファエルは途端に笑顔を漏らした。 「原因がわかったのですか!」 「代わってくれ!」  悠馬は焦ったように叫ぶと、すぐさま心臓マッサージをリファエルと変わった。
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