ベルギウス家の優雅な晩餐(リッツ)

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 溜息をつくリッツはドキドキだ。最近父から何かを言われた事はないが、時々食事会と称して集められて微妙な圧力や爆弾を落とされる事がある。普段言わない分だけ、こういう時は怖いのだ。 「私はすこぶる順調よ」 「俺も順調だよ」 「そうなると兄さんね。次は何をやらかしたのやら」  溜息をつき、一気にワインを飲み干すキャロラインにリッツは苦笑する。そしてひっそりと溜息をついた。  リッツの兄フランクリン・ベルギウスは、いい意味では慎重、悪い意味では几帳面な人物だ。大胆な事は出来ない小心な性分で、マニュアル通りというやつだ。  こういう人だって商売に向いていないとは言えない。厳格に手堅く商売をするにはこの手の人がいいんだろうと思う。  ただ、父アラステアとはあまり相性がよくない。というよりは、父が鬼才なんだろう。父曰く、「大胆さが足りないし、人間観察が足りない」ということらしい。  そしてリッツにとって一番気を使う部分だ。リッツ自身は家を継がないと宣言して家を出て独立したのだが、兄としてはいつ弟が下克上するか分からない。  昔は静かながらも面倒を見てくれた兄が大人になってリッツを避け始めたのは、人懐っこいリッツにとっては悲しい事だった。 「あんたも苦労するわね」 「俺も女の子になりたいな。彼氏にお願いして、養子にでもしてもらえないかな?」 「あら、一人に絞ったの?」 「うん。すっごく幸せだよ」     
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