ベルギウス家の優雅な晩餐(リッツ)

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「あら、お金を稼ぐのは男性だけれど、それを使うのは女性よ。当たらないわけがないわ」  自信満々のキャロラインに苦笑するアラステアは満足そうにワインを飲み込む。そして視線をフランクリンへと移した。 「お前は最近、上手くいかないね」  その言葉に、フランクリンはビクリと怯えたように震えた。また何かしらやらかしたのだろう。だからこそ顔を上げられないのだ。 「交渉に失敗して、大口を逃した。私の跡を継ぐなら、狙った商談を確実にものにしなければいけないと何度言ったら分かってくれるんだい?」 「申し訳、ありません」  一瞬、ナイフを握る手に力が入ったように思えた。  兄は父の厳しい英才教育を受けてきた。型にはまった経営手法をベースにしてきたぶん、想定外の事に弱い。そして優しい人なんだ。  リッツが五歳になる前に母が病気が亡くなった。父は一年の大半を家にいなかった。そんな時、リッツを大事にしてくれたのが兄のフランクリンだった。  夜に不安で泣くと一緒に寝てくれた。描いた絵を一番に褒めてくれたのも彼だった。商品にならない芸術に興味のない父を説得してこの趣味を続けさせてくれたのも、フランクリンの計らいがあったからだ。     
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