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「分かっている。お前を跡取りにとは考えていないさ。それでも、思ってしまう。フランクリンは少し丁寧に育て過ぎてしまったのかな。いい意味で素直だ。けれど、この世界はそれだけじゃ事が足りない」
グラスの中身を僅かに舐めて、また考え込む。こんなアラステアは、初めて見た。
「これが普通の商売人なら、このままでいい。だがベルギウス家という家はそうはいかない。商業の流れを感じ読み取り、国内の物流が滞らないようにそれなりに監視していく必要がある。同時に極端な貧富は国を転覆させる。違法な流れも出来れば断ちたいが……ここはジョシュアなんかも関わるからね」
「舵取りが難しい」と、アラステアは言う。リッツもそう思う。そして今のフランクリンでは、力が足りない事も。
「お前ぐらい頭の回転が速く、人間観察ができて機転が利けばいいんだけれどね」
苦笑したアラステアは、それっきり黙ってしまう。その姿を、リッツはどこか気の毒に見てしまった。
「俺でよければ、兄貴を助けるよ」
思わず言うと、アラステアは少し驚いて、次にククッと笑った。
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