従者からのSOS

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「はい。商人は襲われる可能性もある職業なので、スケジュールをしっかり守るんだと言っていました。予定の変更などをルーズにしていると、もしもの時に誰もそれに気付かない可能性がある。けれどいつもきっちりとルールを決め、スケジュールを守っていれば早い段階で誰かが気付いてくれるかもしれない。金銭管理と顧客対応、従業員への気遣いとスケジュール管理においては、あの方完璧です」  ルフランの言う事には説得力がある。確かに商人を狙った強盗は多い。手っ取り早く金目のものを持っているか、現金を持っているからだ。  その場合、早く気付いてくれる事が命に関わる。強盗も金目のものをゲットできれば殺すまでいかない奴等も多い。それでも身ぐるみ剥がされてどこぞに放置されれば、それだけ危険は増すのだし。  ファウストは難しい顔をしていたが、やがて立ち上がる。方針を決めたのだろう。 「報告にきた従者というのは、すぐに来られるか?」 「待機させてます」 「シウスと……グリフィスも呼んでおく。詳しい話を聞きたい。これが本当に事件なら、ジェームダルとも連携して動く事になる。少し面倒だが、時間をかけるわけにはいかない」  ファウストの決断に、ルフランはスッと立ち上がって深々と頭を下げた。 「有り難うございます」  コントばかりを繰り広げていた彼とは重ならない、それは主を思う従者の姿だった。
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