従者からのSOS

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 同行していた従者のアートは年の頃は三十代半ばという感じで、身なりもしっかりしている。ただその顔は憔悴していたが。 「状況を教えてもらいたい。消えたのは、リッツと兄のフランクリンなんだな?」 「はい。私達は予定よりも少し早い日程でジェームダルへと入り、順調に王都へと入りました。約束の日に四人そろって城へ伺い、無事に商談は成立。その時に代金も受け取り、その日はすぐに予約していた宿に入りました」 「遊びに行ったりはしたのか?」 「いいえ。リッツ様は他国では特に何があるか分からないからと、一度宿に入られたら出てきません。出る場合は周囲の者二人に行き先と帰り予定を伝えていきます。これは絶対のルールです」  意外な一面だった。あいつの商売の事には首を突っ込んでいなかったが、案外しっかりしている。それをリッツ自身がしっかりと守っていたからこそ、この従者も御者も異変にいち早く気付いたのだろう。 「翌日早朝には王都を離れて帰る予定でしたので、私とキーファは待ち合わせ時間よりも一〇分早く一階の食堂で待っていました。ですが時間になっても姿を現さない事に不安を覚え、お部屋に伺うとそこにはリッツ様もフランクリン様もなく、窓は開け放った状態になっていました」     
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