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可能性で考えるなら、人身売買を生業とする業者に売られたというものだ。リッツは見た目も良くてまだ若い。労働力としては十分だし、性奴隷としても需要がある。
チェルルやベリアンスにも話を聞いたらしいが、厳しくなっているだろうが根絶には時間がかかるとの事だった。
既に、売られた後だったらどうやって追いかける。ジェームダル国内ならダン達の力を借りて売買業者をつかまえ、そこから洗い出しもできる。
けれどまったく違う国の奴が買っていたら? リッツを見つけても、既に今のあいつじゃなくなっていたら?
ぐしゃぐしゃと乱暴に髪を混ぜる。最悪しか浮かんでこなくておかしくなりそうだ。
「グリフィス」
「……側に、いてやればよかった」
「それは難しいよ」
「俺が仕事やめて、あいつの護衛にでもなってやれば」
「それ、本気で言ってるの?」
珍しく鋭い視線のウルバスがこちらを見る。その目はとても冷たくて、背が冷える感じがした。
「それで、リッツは喜ぶの? いいよって言う? グリフィスは納得できるの?」
「それ……は」
「今はこんな事になって不安や後悔でそんな事を言うんだろうけれど、ちゃんと考えないと。グリフィスらしくないと、リッツだって背負う事になる。今の関係が崩れるよ」
「悪い、俺……」
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