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「私の治世になってかなり潰したのですが、どうやら小狡い奴が胴元になったようです。市場をなくした人買いから買いたたき、需要のあるところに流しているようです」
「捕まえられないのですか?」
「商人の方は捕まえていますが、大元は尻尾を出さないのです。子供の受け渡しをしている人物はその場で雇われた人間で、指定の場所に指定の箱に子供を入れて放置するだけ。依頼者は分からずじまいです」
狡猾で、しかも慣れている。そういう奴が相手となると、売買が成立する前にリッツの身柄を抑えられるかは微妙になってくる。
どうする、もう売られた後だったら。
「捕らえた商人から情報を吸い上げたり、聞き込みで子供を買った人物を見つけたりしながら保護はしていますが、どうも全てではありません。買い付けた者の話では、外海の人間も取引がありそうなんです」
「まずいですね。外海の国では未だに奴隷制度を採用している国があります。そうした国に流れてしまった場合、取りもどす事はほぼ不可能になってしまう。彼らの国では違法ではなく、金を払って買っているのですから」
「そういう事です。取りもどすにしても元金と違約金を払えと言われかねません」
ランバートとアルブレヒトの冷静な会話を聞くだけで心臓がギュッと握られる。それはもう、絶望的と言っていいんじゃないのか。
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