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必死に神頼みしていると、他からも声が上がる。あっという間に価格は七〇〇ゴールドを越えた。
それにしても、結構値がつくもんだ。五〇〇ゴールドだってかなりの大金だ。家が建つ。そんな価値が自分にあるなんて、リッツは思っていないのだが。
「七五〇が最高ですが、他にありますか!」
オークションを仕切る司会が興奮気味に言う。
その時、部屋の隅にあるテーブルで静かに手が上がった。
「一〇〇〇」
「!」
その声に、心臓を掴まれるような衝撃を感じた。低く肉感的な声には色気がある。視線を向けたその先にいる人を、リッツが間違うはずがない。
見てくれは変わっていた。奔放な癖の強い黒髪は綺麗に香油で整えられているし、そこにサバルド王国の男性がつける金輪をつけている。無精ひげもなければ、肌艶もいい。白いスーツからも分かる筋肉質な体。腰に巻かれた緋色の布はサバルドの王族が好む色だ。
その隣りには、奴隷としてもう一人いる。肩までの金髪に、緑色の縄を編んだ輪をつけている。白いシャツに黒いジャケット姿だが、首にはしっかり首輪がある。彼の国の奴隷である証だ。
でも、間違いなく親友だ。きて、くれたんだ。
「一〇〇〇、上がりました! サバルド王家のアリー王子です!」
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