363人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
司会の興奮した声に、周囲がざわめく。野性的な金の瞳が、ジッとリッツを見ている。
どうしよう、嬉しすぎて泣きそうだ。今すぐあの胸に飛び込んで、懺悔したり甘えたりしたい。キスをして、触れて欲しい。
でも、触れてくれなかったらどうしよう。約束を破って他の男のモノを受け入れた事を怒ったらどうしよう。それは、悲しすぎる。
嬉しさと切なさに泣きそうだ。その中でオークションは進んで、デブ男とアリー王子の一騎打ちだ。
「二〇〇〇」
とうとうアリー王子の口から大台が出た。その金額にリッツの方が焦ってしまう。そんな大金、誰が払えるんだ。屋敷が一軒、召使い付きで建つ金額だ。
そんな大金を彼が持っているとは思えない。それとも、アラステアあたりに話がついているのだろうか。
いや、もしも父に話が通っていれば、今頃本人が出てきて船を荷物ごと買うという恐ろしい事をしてもおかしくない。
「二〇〇〇! 二〇〇〇がでました!」
司会のボルテージも最高潮に達し、デブ男もとうとう下りた。
ハンマーが鳴り、オークションが決する。
身なりのいいアリー王子が真っ直ぐにリッツを見て立ち上がり、舞台上で代金の引き渡しが行われようとしている。その後ろには召使いが黙ってついてきた。
最初のコメントを投稿しよう!