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「おめでとうございます! それでは頭金として半額をお支払いください」
「あぁ? どうしてお前等に金を払わなきゃならない」
「は?」
司会者は訳が分からないという様子で困惑する。リッツの鎖を持っている黒髪の身なりのいい男も警戒したが、無駄だ。この人をここまで接近させて、素人に毛が生えた程度の奴が敵うはずがない。
「俺は俺のものを取り戻しにきただけだ。お前等には金じゃなくて、罰を与えてやるよ!」
言うが早いか、アリー王子ことグリフィスがリッツを捕らえている男の胸ぐらを掴み、舞台に投げ飛ばす。逃げようとしている司会は奴隷になりすましたランバートが綺麗に蹴り倒した。
「リッツ!」
声に、少し視界が霞んだ。そして、愛しい胸に飛び込んだ。
「グリフィス……グリフィスぅ」
「遅くなって悪かった」
「ぎで、ぐれだならいぃ゛」
嗚咽と鼻水でグズグズで、伝わったのかも微妙な状況だがいい。十分だ。
「そいつらを捕らえろ! 船を外に出せ!」
「それが!」
エニアスが慌てて指示を出し、ごろつきみたいな奴等が舞台に数十人集まってくる。
だが、船は一切動く気配がない。青い顔をした操船の男がエニアスに悲鳴混じりの報告をした。
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