オークション開始(リッツ)

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「完全に囲まれています! 前方からジェームダル国軍、背後から帝国国軍の旗を揚げた船が!」 「なに!」  直後、入口も裏口も抑えたのだろう騎士達が押し寄せてくる。客席の入口をダンが仁王立ちで塞ぎ、舞台袖からキフラスが数人を片付けながら現れる。そしてその壇上に、一際目を惹く人物が現れた。 「ここにいる者を全員捕らえなさい。奴隷禁止法違反、及び人身売買に関する法律違反です」 「は!」  全員がテキパキと動き、逃げ惑う人々を捕らえて縛りあげる。当事者であるリッツは変わり行く状況に、正直置いて行かれた。  ふわりと肩に上着が着せかけられ、意外と体が冷えていた事を知った。首輪もすぐに取られ、次には熱い抱擁が待っている。  苦しそうなグリフィスの顔が、肩口で震えていた。 「よかった……よくねーが、間に合って」 「グリフィス」 「怪我、ないか。なんか変な薬とか使われてないか? 本当に今までみっけられなくて、悪かった」  自由な手を背中に回して抱きつけば、安堵が戻ってくる。止まっていたんだろう時間が動き出した感じがあって、リッツは素直に甘えた。 「平気、来てくれるって信じてた」 「悪い……」  大きな体が小さく見える。それくらい心配してくれたんだと思ったら、全部がどうでも良い気がした。  だが一つ、良くない事もある。     
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