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「今から手術して骨を固定しても、変形するかもしれない。もしかしたら骨折部に痺れが残ったり、血流が悪くなってくるかもしれない。血流不足が酷くなれば、壊死する。最悪、折れている左脛の途中から切断になるかもしれない」
ランバートは辺りを見回し、木片を二つ持って患部を挟み、少し強めに締め上げた。
途端、フランクリンは大きく目を開いて口を大きく開けたが、呻くような濁った声しか出てこない。悲鳴や言葉が出ない。
ランバートも気付いたのだろう。首元を隠すような服を慌てて脱がせた。
そこにあったのは、紫色に変色した胸元のほか、喉仏への外傷痕だった。
「声を出せないように喉を潰したのか」
舌打ちをしたランバートが服を着せて担架と治療を指示しに上に行く。それを呆然と見送り、リッツはヨロヨロとフランクリンへと近づいて、側にペタンと座った。
「ごめ、俺きづかな……」
震える手でフランクリンの手を握ると、僅かな力が握り返してくる。痛みに涙を流しながらも、フランクリンは穏やかに笑って首を横に振った。
「ごめ゛……」
「話さなくていいから! ごめん、助けられなかったぁ」
このまま、話す事もままならない状態になったらどうしよう。もしも、足を切ることになったらどうしよう。もしも、死んでしまったら。
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