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「城が一番医者も設備もいい」というアルブレヒトのお許しで、深夜にも関わらず城の医者が手術をしてくれている。ランバートも手伝いくらいはできると、助手をしてくれている。
不安が募り、俯いたまま顔を上げられない。顔色は悪かったけれど、これほどの事になっている事に気付いてやれなかったんだ。
「大丈夫だ、リッツ」
「だって、あんな……足、切るかもって」
「大げさに脅されただけだ。大丈夫、信じてやれ」
「だって! だって……」
今まで悔しい思いはしただろうし、そういうのを飲み込んで笑っていたのも分かった。頑張っても成果が出なくて、本当は苦しんでいるのも知っている。
でもこんな怪我なんてした事がない。痛い思いなんてしたことのない人なんだ。そんな人が、このまま足がなくなるかもなんて怪我したらきっと、辛い……
隣りにある腕が引き寄せて、強く抱きしめてくれる。それにどれだけ安心したかわからない。大きなものに包まれるようで、焦りが溶けていく。
「お前の兄貴だ、根性ある。尋問した奴等から聞いたが、お前の兄貴は足引きずっても『弟を返せ』と訴えてたらしい。声が出なくなっても、しがみついたらしい」
「そんな!」
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