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そんなの、知らない。そんなに、頑張っていた姿を見ていない。
「確かに間違ったかもしれないし、無罪とは言えない。けど、お前の兄貴にとってお前はやっぱ大事な弟なんだ。それだけは確かだ」
傷ついてないとは言わない。大変な状況から解放されて、色々と思う事もある。けれどグリフィスのこの言葉は何よりも心強く思えた。
「……甘いんだ、兄貴。いつもさ、俺の悪戯まで一緒に怒られてくれた。母親が死んで、寂しい時は側に来て一緒に寝てくれた。好きなお菓子、自分も好きなのに俺にくれるんだ。そんな……甘っちょろいけどいい兄貴なんだよぉ」
「あぁ、そうだな」
「大人になんてならなきゃ、ずっとこのまま……俺がもっとどうしようもないバカなら、兄貴も悩まなくて!」
「あぁ」
「俺、商売やめる!」
感情のままに出た言葉だった。けれど、それもありな気がしてしまった。本当のビッチバカになれば、フランクリンの脅威にならない。いっそ騎士団の事務局にでも入れば、グリフィスと一緒に。
思ったけれど、次には頭に軽い拳骨が当てられる。見上げるとグリフィスが、少し怖い顔をしていた。
「お前は商売人がむいてる。やめんじゃねぇ」
「だって……」
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