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「軌道に乗るまでは血反吐吐く思いだったよ。親父からは突き上げにあうしさ。あの笑顔を見るのがもの凄く怖かった」
「それでも台頭するまで待ってくれたじゃない」
「まぁ、それは意外だった」
当時を思い出して、リッツは苦笑した。
アラステアは従業員には優しいのだが、一方で家族には厳しい。リッツは胡散臭い笑顔のままに散々に罵られた。無能と言われた事は数知れず、甘いと言われるのは数時間おきだったこともある。
それでも自分のやり方は変えたくなかったし、このやり方で父を見返してやりたかった。それが今、かなっている。
独立した当時、リッツは資金をアラステアに借りた。無期限無利子という無茶な条件でだ。
当然通らなかったが、取り立てを十年待ってくれる事にはなった。その間に結果を出せなければ家に帰って返済しろという。
ここでチャラにしないのがやっぱり父だ。そしてリッツはちゃんとその間に返済したのだった。
「ところで、今日なんの集まりかあんた聞いてる?」
ワインを飲みつつチラリとこちらを見るキャロラインに、リッツは首を竦めて苦笑する。その様子に目の前の彼女は溜息をついた。
「やっぱり?」
「表向きは久々に家族で食事がしたいだろ?」
「それを信じるわけ?」
「まさか。誰かがなにかしたのかな?」
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