リッツ・ベルギウス

1/6
362人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ

リッツ・ベルギウス

 リッツ・ベルギウス。  帝国四大公爵家の次男にして、繊維業を中心に台頭を始めた商人。  外海の国とも取引があり、そこで仕入れた美しい生地を使ってのオーダーメイドはデザインから縫製までを全部自分達で行う拘りっぷり。仕事も丁寧で、デザインも流行のものからクラシカルなものまで扱っている。  加えて冬にはクシュナートから仕入れた上質の絨毯や毛糸を輸入。毛糸などは直接仕入れて自らの所で編ませ、通常よりも安く質のいいものを販売している。  最近では長く国交のなかったジェームダル王国とも取引があり、帝国では高価な染料の輸入を行っている。それだけに留まらず、ジェームダル王室にも仕立てた服を収めるなど、彼の国でも成功をしつつある。  だが彼は、こうした成功面だけを見ていては半分だ。  彼は貧しい人々こそ引き上げるように商売をしている。クシュナートで仕入れた毛糸を編むのは、冬に仕事がなくなる教会の子供達や貧しい母親だ。それも一つずつ訪問し、一着いくらで買いたたくのではなく、会話をしてできばえを見て、彼みずからが値をつけていく。  縫製で働く女性達も裕福にはしてやれないが、丁寧に事情を聞いて対応をしている。  ジェームダルでも貧しい子供達から染料を買い、対価と食料を渡している。  商売は慈善事業ではない。本人もそれを認めながら手を伸ばす、そんな彼を嫌う従業員はなく、だからこそ離職率は減ってより良い物をと一丸となってプロフェッショナルが育っていく。  そうして育ったプロが、より良い物を生み出して品質を保持し続けるからこそ、リッツの店は小さいながらも客足が増えていくのである。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!