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ジェームダル入港(グリフィス)
翌日午前中、予定よりも一時間ほど早く船は帝国を出た。第三が話を聞いて、夜通し整備と確認、食料や水の積み込みに奔走してくれたようだ。
遠ざかる陸を見ながら、甲板でぼんやりと水面を見る。潮を含む風がグリフィスの髪を撫でていく。
「大丈夫?」
「ウルバス」
声をかけられて振り向くと、気遣わしい顔をしたウルバスがいる。隣にはランバートもいた。
「元気ないから、気になって。グリフィスのそういう顔、あまり見ないから」
「あぁ……ワリィ、空気悪くして」
正直、自分でも驚く程に落ち込んでいる。他の事をしているか、意識的に違う事を考えなければ不安に押し潰されてしまいそうなのだ。
どこかで、楽観視していたのかもしれない。騎士じゃないんだから、リッツは安全だと思っていたのかもしれない。側にいたから、それが普通に思えていたのかもしれない。
バカだ、んなことない。商人を狙った追い剥ぎや強盗は帝国でもある。遠距離なら尚のこと危ない。
リッツは他国……外海の国にも足を運ぶ商人で、時に何ヶ月も帰ってこないと自分で言っていたじゃないか。それが、安全であるはずがない。
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