オークション開始(リッツ)

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オークション開始(リッツ)

 船が出航したのは、船倉にいてもわかった。ついでに沢山の人が乗船したのも。  リッツは体を綺麗に磨かれ、これ見よがしなパンツを久しぶりに履いた。髪も香油で丹念に梳かれてツヤツヤだ。  結局逃げ出す事ができないまま、オークションの日になってしまった。  ただ、わりと情報は集まった。今日のパーティーに参加するのはジェームダルのお歴々、つまり古い因習が捨てきれないご隠居や古狸だ。他にもサバルド王国の高貴な人物もいるとか。  サバルド王国。強い癖のある黒髪に、彫りの深い顔立ちと体躯がいい。グリフィスを思わせる国の人々。  心臓が痛くなる。会いたいと願ってしまう。会えない事が辛くて、気合を入れていないと泣いてしまいそうだ。  連れてこられたのは少し上の階。おそらく商品の控え室だ。  そこにはリッツを含む十名ほどの男女がいる。どれも見た目は十代だろうか。  怯えて、震えて泣いている。猿ぐつわを噛まされて、手と足を縛られて。リッツだけが拘束がない。  首輪に繋がれた鎖が柱に巻かれ、戸口には人が立つ。     
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