甘ったるいこの世界で

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部屋の中に あなたの残り香がするだけで それだけで もうどうしようもなくなった 「泰成…」 「何」 「結局、何しに来たの?クソ寒い中電車乗ってきて、何か用があるんじゃねぇの?」 「…用という用はない」 「…なんだよそれ」 「手、貸して」 「は?なんで…」 「いいから」 「…」 俺は、勇気が出してきた手を、優しく握った 「最近、文字のやりとりだけだったから…こうして実在を確かめに来た…」 「…そっか」 勇気に会えたことは嬉しい 「でも、夢なんだよな…これ」 「…」 「俺は東京で、お前は宮城で…この時期に…会えるわけないよな…」 「…俺と会えるなら夢でもいい。くらい言ってくれよ」 「この夢自体は幸せだよ。でも…」 起きたら俺は 勇気の香りがする部屋で 一人きりなんだ 「…」 せめて、声が聞ければ… プルルルルっ プル… 《もしもし》 「あ、勇気?珍しいな。こんな早く出るの」 《俺もちょうど掛けようとしてたから…あ…雪降ってきた…》 「…ホントだ…窓越しに見るなら綺麗だけど外に出ると寒いんだ…よ…な…」 《結構さむいんだけどさ…》 「嘘だろ…」 そこには 「下に降りてきてくんねーかな…」 俺の最愛の人が立っていた
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