もう一声、もう一歩

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もう一声、もう一歩

B「あっこんなところに美味しそうなリボンが」 A「そこはパンじゃないんですか?」 B「それはそれで美味しそうだね」 A「ゴーグルさんは、いつも本当ナナメですね」 B「ありがとう、じゃあ一口くれる?」 A「褒めてませんが」 B「いやあ助かったよ。鳩を美味しそうだなーって眺めてたら、みんな羽ばたいていっちゃって……」 A「あげるなんて言ってませんし、鳩を食欲的な目で見るのはどうかと思いますよ」 B「じゃあどんな目で見ればいいの……!?」 A「どんだけお腹空いてるんですか……鳩といえば平和の象徴でしょう」 B「なるほどね。じゃあ君のことは?」 A「は?」 B「君のこと、どんな目で見たらいい?」 A「はい?」 B「『美味しそう』じゃ不満なんだろう?」 A「それはリボンの話ですよね……?」 B「ぼくにとっては、君といえばそのリボンなんだ。名前も知らないし」 A「それを言ったらゴーグルさんもです」 B「君にそう呼ばれるの、けっこう好きなんだ」 A「人の話聞いてます?」 B「照れくさくてリボンのことばかり言ってたけど、君の髪きれいだよね」 A「えっ!?」 B「いつもそうだけど今日は特に……雪と朝日に飾られて、すっごくキラキラして……美しいなって思って」 A「……そこは『美味しそう』じゃないんですね?」 B「それはリボンの話だろう?」 A「……褒めても何も出ませんよ」 B「名前くらい、出してくれてもいいんじゃない?」 A「そこはパンじゃないんですか?」 B「パンはぼくの名前と交換でどうだろう?」 A「……本っっっ当にナナメですね、ゴーグルさん──じゃなくて、えぇっと?」 彼女は笑って、ぼくの口の前にパンを差し出してきた。
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