俺たちのバレンタイン

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「……週末、買い物付き合えよ」 「買い物?」 「新しいの、買う。……スーツ」 「プッ」 「だ、から、笑うな――」 ぐうううぅぅぅぅ……っ。 「……プッ」 「っ」 「せっかくだからどれか食べますか?チョコ」 「……佐藤くん選んで」 「うーん。どうせなら普段食べられないような高級な……あ」 床に転がるチョコの中で真っ先に目に付いたのは、電気の光に反射して黒く光る平らな箱だった。 シンプルな無地の箱に、赤いリボンがかけられている。 手を伸ばして拾い上げると、妙に軽かった。 「これとか高そうじゃないですか?」 「あー……開けてみて」 「はい」 十字に結ばれていた真っ赤なリボンを解き、蓋を取る――と。 ひらり。 なにかが、舞い落ちた。 それは、 真っ黒なTバックのパンツ。 「は?え?なにこれ!?」 理人さんがその細い布切れを拾い上げて、目を白黒させる。 俺は、手に持っていた箱をゆっくりと裏返した。 そこに貼り付いていたピンク色の付箋には、 『木瀬』 グシャ、と箱を握りつぶすと、理人さんの顔からサッと血の気が引いた。 「理人さん、木瀬さんからも受け取ってたんですか……?」 「や、ち、違う!直接受け取ったわけじゃない!た、たぶんあいつが勝手に紙袋に……!」 「なんで後ずさるんですか」 「だ、だって佐藤くん、顔が怖い!」 「ほんとは来月理人さんの誕生日プレゼントに……って思ってたのがあるんですけど」 「え!?い、いや、無理!今日はもう無理!絶対無理だから!」 「やってみなきゃわからない……でしょ?」 「佐藤くんっ、佐藤くん!?ちょ、ちょっと待っ……あぁんっ!」 「いい声でるじゃないですか」 「あっ、や、やめっ……あ、あ、あ――…」 ハッピー・バレンタイン! fin
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