俺たちのバレンタイン

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「もらってない、って……一個も?」 「はい」 「……ほんとに?」 「はい。全部断りました」 「な、んで……」 「俺は、理人さんからのチョコしか要りませんから」 「っ」 なんだ、それ。 なんだそれ。 なんだそれ! 「そんなこと言われたら……」 断るのがめんどくさくて全部受け取ってきた俺が最低な男みたいじゃないか。 それに。 鞄の中に入ったままのチョコがものすごく渡しにくくなった! 「あ、でも、理人さんがちゃーんと全部チョコもらってくれててよかったです」 「……なんで」 あー、しまった。 ここは話を広げるところじゃなかった。 「おかげで、初めて後ろだけでイけたでしょ?」 佐藤くんが、その端正な顔を歪めてにやにやしている。 「気持ちよかった?」 ほんっと、佐藤くんのことを大型犬だとか言ったやつをぶん殴ってやりたい。 あー、俺か? 初期の俺か! 夏の終わりの乾いた空気に絆されて真実を見抜く目を一時的に失っていた俺か!? こいつのどこが大型犬なんだ。 思いっきり盛りのついた肉食動物じゃないか! 手首痛いし。 おしりなんかもっといたいし。 信じられないくらいエッチなこと言ったし。 優しく抱きしめてくるし! 髪の毛クンクンしてくるし! あー……もう。 あああああああああもうっ! 「ホワイトデー覚えとけよ……!」 佐藤くんはまたあの向日葵の笑顔で、楽しみにしてます、と笑った。 fin
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