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④
梶さんとの打ち合わせの後、私は幼稚園まで春香を迎えに来た。
「あ、ママ!」
笑顔で駆け寄る春香を見て、私は癒される。
と同時に、驚いた。春香の手と顔に、絆創膏が貼られていたからだ。
よく見ると、小さいひっかき傷や擦り傷のようなものもある。
「どうしたの?」
「すいません、お母さん……」
春香の後から歩いてきた春香の担任、小春先生が私に頭を下げた。
「実は春香ちゃん、同じ組の康太くんと喧嘩をしてしまって……」
「そうなんですか?」
にわかには信じがたかった。春香は今までで一度だって友達と喧嘩をしたことなんてないのに。まして男の子と喧嘩なんて。
春香は何も言わずに私の腕にしがみつき、私の顔を見つめている。小春先生は声を潜めて続けた。
「康太君が、その……、春香ちゃんにお父さんがいないからと、からかってしまったらしくて」
「そんなことが……」
「それで春香ちゃんが怒ってしまって。いえ、もちろん当然のことなんですけれど、何ぶん、私が他の子の面倒を見ていた時でして……。本当に申し訳ございませんでした!」
先生は、再び頭を下げた。
「いえ、そんな。すいません。ご迷惑をおかけして……」
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